匂香いとニクし

文章に残せる自信はなかったけど、せっかく新しい感情になったので書き出してみる。

雄大くんが匂いというフレーズを大切にしていたけど、カップ焼きそばを食べる動機、心がどしっと重くなるような空気、とんとんとリズムよく展開する会話、そして彼らの仕事について、どれもその場の匂いが伝わってきた。それが良い意味でも悪い意味でもこびり付くような感じがして、終わったあとも胸に何か残ってる感覚があった。多分これが雄大くんの言う匂いなんだと思う。

 

舞台の内容は好みじゃなくても役柄は愛せたことなんて何度もあって。

ただ、今回は違った。結構序盤の時点でなんかやなやつって思った。沢村という役。振る舞いや話す内容から、多分青春!陽キャ!みたいな人生を送ってきたんだろうなという印象。いくら新人でも年下でも自分の意見が正解だと押し付けるのは違うし、君にこう思ってほしくて俺は君とこんな関係が築きたいんだってわざわざ口に出して伝えることも私には違和感があった。伊舞が社長の息子だと分かったあとの対応も、わざとらしい清々しい程のへこへこした感じが何とも言えない気持ちになった。

自分がされて嫌だと感じたことは人にしないようにと思っているけど、私も3人みたいに知らないうちに誰かにしてしまっているのでは?と思うと、どの役も他人事には思えない。

沢村が伊舞と同じことをしようとした時、すごく悲しくなった。そんな方法で家族を守ろうとしても、翔太くんはきっと喜ばないよってなってしまった。さっきまで自分が感じてた恐怖を次は相手に与える姿、懸命に家族と自分を守ろうとする姿、悲しいというか情けないというか。でもそこまでして守ろうとしてくれる父親を少しだけ羨ましくも思った。沢村の行動が正しいとは思わなかったけども。

 

人間そのもののぶつかり合いが目の前で起きてるってことが、衝撃的だった。息を止めたくなるようなシャットアウトしたくなるような表現も瞬間もたくさんあったのに、役者辰巳雄大から目が離せなかった。離してしまっても、やなやつだなって思っても、見たい衝動に駆られた。ふしぎ。

大好きな人が演じてるのにやなやつってなる感情が初めてで、でもそれほど夢中にさせてくれるのは雄大くんの演じ方ゆえだと思う。振り幅がえぐい。観劇するといつもカテコでやっと会えたって感覚になるけど、今回は過去一でそう感じた。いつもの雄大くんだってめちゃくちゃ安心したし、緊張が一気にほぐれた。

心にずしっとくる何かがまだ残っていても、自分なりに咀嚼できた気はする。観に行ってよかったとまだ言い切れないけど、新しい雄大くんが見れた。それだけで価値のある経験だと思った。


あとこれだけ追記しておく。いつもは音楽が大きくなったり照明が暗くなったり、開演がはっきりと分かるような演出が多いけど、エダニクは気づいたら沢村がカップ焼きそば作っててびっくりした。そこから客席の照明が落とされていって不思議な演出だなと思った。ただの日常を覗き見てる感じがして新鮮だった。

 

観るたびにパワーアップしてる役者辰巳雄大、次はどんな表情が見れるか楽しみ。いつだって目が離せない。